2026年1月にBoothで公開された新作のギミック・ツールから、スキを多く集めた10点をデータと一緒に振り返ります。ギミック・ツールは衣装や髪型と違い、ツール作家が作る「改変支援系」と、ギミック作家が作る「ランタイム動作系」が同じカテゴリに同居しているのが面白いところで、1月もアバター軽量化NDMFツール・髪フィット支援・ギミック生成ツール・脱衣システム・VR日本語キーボード・マスクテクスチャ生成・グラデーション焼き込み・ExMenu整理・ハイタッチエフェクト・V睡フェイスミラー、と並びは雑多。中央値価格は¥500、中央値スキ数は771、全56件のうち¥1,000未満が約82%で、改変ワークフロー全体を底上げするツール群が分厚い月でした。「Top 10 全件が Modular Avatar 必須」「無料配布が15件で全体の27%」「ゆいちゃまーとさん1人で Top 10 に3作」 と、ギミック・ツール特有のクリエイター集中度・OSS文化・無料化戦略が数字に出ています。
📊 データについて 集計日: 2026-05-05 / 対象: 2026-01-01〜2026-01-31 に公開されたスキ数300以上のギミック・ツール(56件)
注目ギミック・ツール10選
集計時点(2026年5月)のスキ数で並べたランキング形式で、1点ずつ仕様と作り込みを見ていきます。
1位:LAC: Avatar Compressor (Beta) / Lydia
アバターのテクスチャを自動分析してビルド時に最適なサイズへ圧縮するNDMFユーティリティ。商品ページのメインビジュアルが「200MB → 10MB」「最大90%以上削減」という振り切った数値で訴求していて、実際の作例としても Original 364.96 MB → After 3.27 MB(99%削減) といった事例が掲載されています。13,257スキで1月のギミック・ツールで唯一の1万超え、しかも¥0の無料公開という、月の地形そのものを変えた1点。
設計の核は 6つの圧縮プリセット(High Quality / Quality / Balanced(デフォルト)/ Aggressive / Maximum / Custom)から1つ選ぶだけのシンプルなUIで、Main / Normal / Emission / Other のテクスチャ種別ごとにON/OFFフィルタも用意。テクスチャごとの複雑度(%)に応じて自動で最適サイズへ落とす仕組みで、「Chiffon_Body 23% → 2048×2048 を 256×256 に」「Chiffon_Costume 32% → 2048×2048 を 512×512 に」のように何が縮められて何が保たれているかが事前に分かる作り。「縮めたくないテクスチャは Freeze で個別保護」 もできて、自動圧縮 + 手動保護のハイブリッドで品質を細かくコントロールで きます。
実例として、同じピンクのコート姿のアバターがダウンロードサイズ 32.78 MB → 8.88 MB、テクスチャメモリー 192.36 MB(赤)→ 3.45 MB(緑) まで縮んでいるのに、見た目はほぼ変わらないビフォー/アフター比較が掲載されていて、容量削減と表示クオリティのトレードオフ感がかなり緩和されているのが分かります。
導入は アバターのコンポーネントとして「LAC Texture Compressor」を1つ追加するだけ。NDMF(Non-Destructive Modular Framework)の仕組みで変更はビルド時のみ適用され、元のFBX・テクスチャファイルは一切書き換わらないので、合わなければコンポーネントを外すだけで元通りに戻せる完全非破壊設計。Modular Avatar や Avatar Optimizer と併用できるのも実用上の強みです。
配布面の特徴として、本ツールは MITライセンスで GitHub 公開(github.com/Limitex/avatar-compressor)されており、バグ報告や機能追加要望を Issues で受け付けています。ALCOM / VCC からは公式ドキュメントサイト(lac.limitex.dev)経由で vpm リポジトリとして1クリック追加でき、Booth の UnityPackage は anatawa12 さんの VPAI で生成された自動インストーラ——OSS フローをまるごと Booth に乗せた珍しい配布形態です。Beta 版ながら無料・MIT・ドキュメント整備の3点が揃っているのが、改変ワークフロー全体への影響度を一段押し上げています。
2位:Kami-Pita(髪ピタ) / ゆいちゃまーと
「あの子の髪型、私のアバターでも使いたいけど位置合わせが面倒」を一発で解決する髪フィット支援ツール。スライダーで位置・回転・スケールを調整 →「完了」ボタンで Modular Avatar 経由のセットアップまで自動完了する、改変補助系では1月最大の話題作です。1月10日の v1.0 公開からの約3週間で v3.0 まで進めたスピード感も特徴。
機能 の盛り具合がツールの域を超えてきていて、v3.1 で追加されたメッシュ微調整(Deformer) はブラシツールで直接メッシュを変形でき、移動・回転・拡縮の3モード × X/Y/Z対称編集 × Undo/Redo 完備という、Unity 標準のメッシュ編集ツールに近い作り。質感合わせ(髪キメラ) はlilToon専用の機能で、前髪と後ろ髪が違う商品でも、影・リムライト・光沢の設定を一括コピーして統一感を出せるという、改変ユーザーの「合体させたら質感がバラバラ」問題に正面から取り組んだ機能です。
地味に効いているのがプリセット機能で .json 配布・販売OK にしている点。「元のアバター → 改変先のアバター」のメモ情報込みで保存できるので、コミュニティ内で位置合わせデータを流通させられる構造になっています。基準アバターの Manuka を中心に Airi / Plum / Chocolat / Eku/Milfy / Milltina / Shiratsume / Shinano / Sio の8体に対応プリセット同梱で、¥1,500(フル機能版¥2,000) という価格設定。同じく1月Top 10 入りした #6 HayaNuri! / #8 ExMenu Organizer と合わせて、ゆいちゃまーとさん1人でTop 10 に3作占有という、月のクリエイター集中の象徴になりました。
3位:ギミックつく~る / はむ屋
「ギミックを作るギミック」——豊富なプリセットから選ぶだけでアバターギミックを生成し、自作した3Dモデル・音声データを差し込んで自分だけのギミック化にも対応する制作支援ツールです。¥2,500 という Top 10 で2番目に高い価格帯ながら、Top 10 入りに必要なリーチを獲得しました。
搭載プリセットの幅がとにかく広く、心音 / キスサウンド / 手つなぎ / 食べ物もぐもぐ / なでなで / 音楽プレーヤー / 懐中電灯 / ペット / 回転ヘイロー / 小物スケール調整 / マテリアル色変え / マテリアル切替 / 物の出し入れ / スライダー操作 / アバターペン / ポーズクリエーター / 乗り物 / ジェスチャークリエーター / テ レポート / オブジェクトワールド固定 / AFK演出 / コライダージャンプ ——22種類のプリセットが並んでいて、それぞれ Quest対応の有無まで明記されています。
技術的に注目したいのが 「プリセット製作者モード」 で、はむ屋さん以外の他ショップが外部プリセットとして組み込んで販売することを許可している点。生成データは商用利用可能・販売可能で、Prefab化・UnityPackage化・Readme作成サポートまで内蔵しているので、ギミッククリエイターが自作素材を商品化する初手として使える設計になっています。クレジット欄には7名のテスター・技術サポートが並び、商品開発自体が小さなコミュニティで回っているのが見て取れます。
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4位:ふわぬぎ Fuwanugi / Toron_(とろん_)
胸元で手をグーにするとその場に服を脱ぎ捨てる脱衣ギミック。タイトル通りの直球で、VRはハンドサイン操作・デスクトップはメニュー操作という二系統が用意されている、撮影演出系の定番枠を狙った1点です。
注目したいのは v2.0 (beta) で実装された衣装非複製アーキテクチャで、従来 v1.x が「衣装を複製してアバター容量を圧迫し、落下時にTポーズになってしまう」課題を抱えていたのを、自然な形を保ったままその場で落下させる仕組みにリビルドしました。さらに v2.1a でふわぬぎLink という連 動ツールを追加していて、ふわぬぎのON/OFFと連動してシェイプキー値を変更したり、別の衣装(下着等)のON/OFFを切り替えたりできるようになっています。
導入は 「脱衣ギミックPrefabをアバター直下にD&D → Toron_メニューから AutoSetup → 衣装をスロットに入れて実行」 の3手で完結する設計で、¥300 という Top 10 で最安の部類。Toron_ さんは多機能改変ツール「えっせんしゃる」(¥200〜500)も同月公開していて、1月のToron_さんは「脱衣 × 改変補助」の二系統で月内2作リリースという働きでした。
5位:ぜるかなボード / ぜるらぼ (zelLab)
VR中にHMDを外さず日本語入力ができるSteamVR対応キーボードアプリ。VRChatのテキストボックス・ワールド検索・ステータスメッセージ変更・インバイト返信のすべてに漢字変換が乗る、Top 10 で唯一のBoothアセットではない外部アプリ枠です。
設計思想がBoothのVRChatツール群とは少し毛色が違っていて、SteamVRオーバーレイアプリとして動作するため Unity も VRChat SDK も使いません。Windows 11 / Quest 3 / PICO 4 Ultra / Index Controller の組み合わせで動作確認済みで、スタートアップオーバーレイ登録で SteamVR 起動と同時にバックグラウンド常駐させる運用ができます。左サムスティックボタンでキーボードの表示・非表示、キーボード上にカーソルがある状態でグラブして移動、右スティック上下で拡大縮小——VR内でのウィンドウ操作系がしっかり練られています。
価格は無料版で「漢字変換 + ワールド検索 + ステータス変更」が全部使える設計で、有料版(¥1,000)にするとチャット直接送信と腕追従型フリックキーボードが解禁。「無料版で改変ユーザーのワークフローに食い込み、深く使いたい層に有料版を売る」 という、ツール作家らしい段階的価格設計です。1月公開の v2.0 で漢字変換が乗ったタイミングが、Top 10 入りに必要なリーチを稼いだようでした。
6位:HayaNuri!(はやぬり!) / ゆいちゃまーと
lilToon用のマスクテクスチャをUnity上のクリックだけで作れるUnityエディタ拡張。ペイントソフトを開かずに眉毛だけ色変えしたい・瞳の発光設定を作りたいといった改変を一発でこなせる、テクスチャ作業特化のツールです。
技術的に効いているのが 「シー ン上にマウスを乗せると、対応するテクスチャの位置を逆引きしてくれる」 機能で、「3Dのこの部分は、UVのどこ?」という改変者が常に直面する問題を視覚的に解決します。ワンクリックでパーツごとのまとまりを自動認識(眉毛・瞳・まつげなど)して、はみ出し防止機能込みでマスク化。プレビュー上をなぞって塗ると、Unity だけで完結するワークフローが組めます。
Unity 2019.4以降で動作・特別な前提アセット不要という導入の軽さも美点。同じくゆいちゃまーとさんの #2 Kami-Pita と #8 ExMenu Organizer が「アバター本体改変・メニュー整理」に対応するのに対し、HayaNuri! は 「テクスチャ改変」というレイヤー を担当する形で、3作それぞれが改変ワークフローの違うフェーズを埋めているのが面白い構図でした。¥1,500(フル機能版¥1,800)。
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7位:Gradation Baker / dennokoworks
3D空間基準でグラデーションを焼き込めるUnity拡張機能。UVを意識せずに対象モデルへ均一なグラデーションテクスチャを生成できるのが核で、複数メッシュからなる髪や衣装でも揃ったグラデーションを作れるという、テクスチャ作業を空間的に解く発想のツールです。
特徴的なのがシーンビュー上のボックスをドラッグ操作で位置・回転・サイズを調整するUIで、グラデーションの向きと幅を直感的に決められる作り。X/Y/Z軸のミラー対応、ボックス型と球形の切り替え(v1.2.0 で追加)、128〜4096 の解像度切替、背景色の透明/白/黒切替まで対応。v2.0.0(4月)でプレビューシステムが置き換え・加算・スクリーン・乗算の4モードに刷新されたので、現在の最新版は1月公開時点よりさらに進化しています。
このツールも GitHub(github.com/dennoko/GradationTextureGenerator)公開で、ツールで作成した画像は商用・非商用問わず自由に利用可としているのが珍しいラインです。「技術書支援版」(¥2,000)が用意されていて、購入費用を技術書の購入に充てる
